仏教をよりよく知るため:その22
仏の智慧は、私たちに何を教えてくれようとしているのか
キーワード:般若(はんにゃ)
般若と聞くと、恐ろしい鬼女の面を想像されるかたが多いだろうが、これは原意とは関係ない。般若坊という名前の面打ちが女性の嫉妬を表現して、眼をかっと開いた面を作ったから般若面と呼ばれているだけだ。
「般若」は、サンスクリット語のプラジュニャーあるいは俗語形であるパーリ語のパンニャーの音訳語である。慧智とか根本智と意訳されている。つまり、仏教の教える悟りの智慧のことである。
その智慧の具体的な内容については、『般若経』と呼ばれる一群の厖大な大乗経典にくわしく説かれているが、そのエッセンスをまとめたのが、よく知られている『般若心経』という句でよく知られているように、般若思想とは、結局、この世界のすべてのものが「空」であるということである。
キーワード:彼岸(ひがん)
迷いの多いこの世界を此岸(しがん)というのに対して、迷いを離れた悟りの世界を彼岸という。日本では、春分・秋分の日を中日とするそれぞれ前後一週間をお彼岸と称して、お墓参りなどをする期間とさえている。
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように四季のはっきりしている日本においては、彼岸は一つのくぎりでもある。春分と秋分の二季には、太陽が真東から上って真西に沈むところから、太陽崇拝と西方極楽浄土往生の信仰が結びついてできた行事であろうとされているが、これは日本独自のものである。
彼岸の語源はサンスクリット語でパーラミターといい、「到彼岸」と訳されたのを省略したものである。漢訳仏典では、そのまま「波羅蜜多」と音訳されている。別項で説明した「波羅蜜」と同じことばである。
黒人霊歌などによく出てくるヨルダン河などもそうであるが、河の向こうに(あるいは海の向こうに)理想の国があるとする考えは東西を問わず、古代からあったようだ。もちろん、現実の河というより、人間の心にひそむ永遠のロマンに近いものであろう。けっして渡ることができないからこそ、永遠のあこがれなのである。
2010.7.9 東松山店 杉田
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